目次
パニック障害とは
パニック障害は、突然の強い不安や恐怖に襲われるパニック発作を特徴とする不安障害の一種です。
パニック発作が起こると、「死ぬのではないか」といった極度の恐怖や不安が突然襲ってくることがあります。これらの発作は通常、短時間で治まりますが、再発することが多く、患者は発作が起こること自体に対する不安を感じることもあります。
パニック障害の患者は、公共の場所や旅行など逃げることが難しい状況に対して強い恐怖を抱き、これが広場恐怖と呼ばれる状態を引き起こすこともあります
パニック障害の症状
パニック障害の症状には、以下のようなものが挙げられます。
動悸や心拍数の増加: 心臓が激しく鼓動する感覚。
息切れや息苦しさ: 呼吸が困難になる。
めまい: ふらつきや目まいを感じる。
発汗: 異常に汗をかく。
吐き気や腹痛: 胃の不快感や吐き気。
パニック障害ではこのような症状が、逃げることの出来ないような電車の中や、エレベーターの中、仕事の会議中、自分で運転をしているときなどに出やすいのが特徴です。
パニック障害の原因
パニック障害の明確な原因は特定されていませんが、様々な研究によって「環境要因」「遺伝的要因」「生物学的要因」「生まれながらの気質」「治療による副作用」のようなものが発症に関わっているのではないかと考えられています。
原因1. 環境要因
幼少期のトラウマ、虐待、幼少期に教え込まれた厳格な価値観、感情や行動を強く否定される経験など、様々な環境要因によって引き起こされるストレスによって、パニック障害の原因になることが懸念されます。さらに、パニック障害は、ある一つの重大なストレスによるものではなく複数が組み合わさることで、発症する原因となることも。
こうして、幼少期のトラウマや日常的に潜む軽いストレスも、パニック障害を発症する主な要因となり得るのです。
原因2. 遺伝的要因
パニック障害は遺伝的な要因が大きいのではないかと示唆されています。しかし、うつ病などに関わるとされる遺伝子がパニック障害にも関与しているとの研究による結果もある一方、親が発症しているからと必ずしも子どもが発症するとは限りません。
原因3. 生物学的要因
パニック障害は、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の不足や、脳視床下部や下垂体脳機能と呼ばれる脳の機能障害が関わっている可能性が示唆されています。このような、身体的な働きの変化によってパニック障害が発症することがあります。
原因4. 生まれながらの気質
パニック障害は、生まれながらの性格や気質が発症の原因に関与しているとも言われています。神経質で感受性の高い人に多く見られ、ショッキングなトラウマや心配事が気質と組み合わさることで、パニック障害の引き金となることが多いとも言われます。
原因5. 治療による副作用
パニック障害の特徴であるパニック症状は、治療薬の副作用として現れることがあります。例えば、「抗うつ薬(SSRI)」「抗不安薬」「トリプタノール(アミトリプチリン)」などといった薬の副作用として症状が発症し、長期化することによってパニック障害へ発展してしまう場合もあるのです。
このような治療薬を利用する際には、自己判断で内服をやめたりすることなく、医師の指導のもと治療を行うことで、副作用に対する適切な対処を行うことができます。パニック障害のような副作用が強く現れた場合は、速やかに医師に相談し、治療計画を見直すことが大事です。
20歳未満の方へパニック障害の治療法
パニック障害の症状が軽いうちは、ストレス源を特定して距離を置くことで改善されることがあります。一方、重症化してしまった場合には薬物療法やカウンセリングなど、症状や状態に合わせた治療計画を練ることが大切です。
大阪こころの診療所 梅田院では、「副作用のない安全な治療がしたい……。」などの患者様のご希望に合わせた治療法がご提案できるよう、様々な社会性不安障害の治療法を取り入れております。次に、パニック障害の治療法について詳細に説明します。
はじめに、十分な休養が一番大切です
パニック障害を治すためには、前提として十分な休養がとても大切です。パニック障害の発症の元となったストレス源から距離を置き、しっかりと休養を取ることで、心と身体をリフレッシュさせながらストレス耐性を高めることができます。ストレス耐性を改善できれば、パニック障害の症状を改善しながら再発防止も期待できるのです。
治療法1. 薬物治療
パニック障害の治療薬には、以下のようなものが挙げられます。
抗うつ薬
効果概要 | 抑うつ症状を改善させる働き |
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具体例 | 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)など |
抗不安薬
効果概要 | 不安や緊張を迅速に和らげるために使用されます。即効性があるため、大きな不安や恐怖を感じたときに有効である。 |
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具体例 | ベンソジアゼピン系、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)など |
パニック障害で現れる症状は個人差があるからこそ、心療内科・精神科の専門医の指導のもと症状や状態を見極めて適切に治療薬を処方される必要があるのです。治療計画を考える際には、薬物治療とその他の治療法を併せて利用することで、パニック障害の症状改善における相乗効果が期待できます。
治療法2. 精神療法
大阪こころの診療所 梅田院におけるパニック障害の精神療法は、公認心理師や臨床心理士などの心のプロフェッショナルによるカウンセリングを通して行われます。次に詳細に説明します。
公認心理師・臨床心理士によるカウンセリング|認知行動療法
パニック障害治療としての認知行動療法は、人々の思考や行動が感情や心理的な問題にどのように関連しているかを把握し、パニック障害につながる考え方の癖を改善する治療法です。
パニック障害に悩んでいる人は、否定的な思考や行動傾向を持ちがちです。例えば、自己否定的な考え方、無力感、希望の喪失などの癖をポジティブな捉え方に変化させることによって、不安症状の原因となる後ろ向きな思考の連鎖から抜け出すことを目指します。自分の考え方を変えるには、まず自分を理解し受け入れることが大切です。「今ここにある自分」を意識して現実を受け入れながら、感情に左右されない心を養うマインドフルネスの考え方を取り入れることで、パニック障害の再発を防ぐのに効果的です。
大阪こころの診療所 梅田院で実施する認知行動療法は、公認心理師や臨床心理士といった専門家によるカウンセリングを通して実施します。ご希望の方は、来院した際にスタッフへお声がけください。
治療法3. 【自由診療】TMS治療(磁気刺激治療)
TMS(Transcranial Magnetic Stimulation)治療は、アメリカやヨーロッパ諸国では代表的なうつ病治療手段の一つで、近年では様々な精神疾患の症状改善が期待できるとして注目を集めています。TMS治療では、磁気刺激を使って脳の神経回路を刺激することで、不安症状の改善を目指します。TMS治療では頭皮を通じて磁気パルスを発生させる装置を使用することで、脳の特定の領域に刺激を与え、脳の神経活動を正常化させます。うつ症状に作用する神経伝達物質の生成を整えることで、症状の緩和を目指します。
TMS治療では、週に数回程度の施術を実施し、数週間から数か月にわたって継続していきます。治療は一回あたり約15分〜30分で終了するため、通院による治療も手軽に行いやすいのがメリットだと言えるでしょう。
さらに、TMS治療は、薬物治療で効果が出なかったり、薬物療法を避けたい/減らしたいと考えたりする方に合っていると言えます。うつ病や他の精神疾患の治療において、TMSは代替的な手段として検討の対象となることがあります。TMS治療は専門医の指導を受けて実施されるべきであり、効果や安全性は個人によって異なることがあります。治療の適応や詳細については、医師や専門家との相談が大事です。
大阪こころの診療所 梅田院で実施するTMS治療は自由診療です。自由診療のメリットは気軽に日帰りで治療を受けられること。保険診療のTMS治療を受けたい場合は厳しい審査基準(十分な薬物治療で効果がなかった、長期間で自殺念慮がある、6週間以内に30回の治療ができる、大学病院などの大きな医療機関に通えるなど)をクリアした上で、約2ヶ月〜3ヶ月間の入院治療を行います。すなわち、自殺願望が引き起こされるほどに重症化したうつ病患者しか、TMS治療は保険適用されないのです。
「パニック障害が重症化する前に早く治したい」「仕事に早く復帰して安心したい」とお考えの方は、自由診療でのTMS治療をおすすめします。
パニック障害セルフチェック
- めまいやふらつきが頻繁にある
- 身体から意識が遠くなる感覚がする
- 発汗や身震いがひどい
- 息苦しさや動悸を感じる
- お腹や胸に違和感や痛みがある
- 理性を失ってしまうのではないかと恐怖を感じる
- 身体に痺れや熱感、冷えやすいなどがある
- 喉に詰まる感覚や不快感がある
これらの症状が2つ以上該当する場合、2週間以上毎日のように続いていたり、日常生活に支障があったりする場合には、パニック障害の可能性があります。パニック障害かもしれないと感じた場合には、早期発見・治療のためにも迅速に医療機関へ相談することをおすすめします。
医療機関を受診することで、パニック障害の診断が正式に確定します。精神疾患の診断に対して不安や否定的な印象を抱く方もいますが、病院でパニック障害の診断を受けることにはしっかりとしたメリットがあります。
病院でパニック障害の診断を受けるメリット
医療機関でパニック障害の診断を受けた場合、適切な治療計画を練ることで早期改善が期待できると共に、健康状態に合わせた行政や地方自治体などの公的機関によるサポートを受けられることがあります。例えば、病院へ行かず自己判断で仕事を休み始めてしまった場合、休業手当や病床手当を申請しても診断を受けた日からしか支給されず、休んだ日数分の満額を受け取ることはできません。
さらに、パニック障害の診断書を用いて精神障害者保健福祉手帳を発行すると、就労支援や医療費控除を受けられます。
このように病院でパニック障害の診断を受けることで、様々な行政的サポートを受けられるようになります。
20歳未満の方へパニック障害の症状を伴う精神疾患のサポート支援
大阪こころの診療所 梅田院では、パニック障害の症状を伴う精神疾患のサポート支援として社会復帰の先駆けとして有効なリワークへの紹介状や、行政のサポートを受けるために有効な診断書を発行しています。このような、精神病に対するサポート支援についての詳細をご紹介します。
サポート1. 職場復帰・就労支援
パニック障害などの精神疾患治療の終わりがけでも、病気発症時のトラウマから復職ができなかったり、就職活動が困難であったりする患者様は多くいらっしゃいます。そのような「職場復帰を目指したい方」を対象として、リワークや就労支援施設などへのご紹介も可能です。無理せず少しずつでも社会に戻る努力をしたいあなたに合わせた施設を見つけられるようにサポートします。
サポート2. 休職や復職に必要な診断書を最短で即日発行!すぐにもらえるから安心
大阪こころの診療所 梅田院では、「もう耐えられなくて、今すぐにでも休職したい……。」「パニック障害を治して早く復職がしたい……。」と考える出来る限り多くの患者様を助けたいとの想いから、休職・復職に必要な診断書を最短で即日発行ですぐにもらえるように努めております。精神科・心療内科には、当日や翌日などの予約を受け付けていなかったり、初診を受け入れていなかったりするクリニックが多数見受けられます。
今すぐに助けが必要にも関わらず、病院に受け入れてもらえない患者様を出来るだけ減らせるように、当院の医師の診察では、迅速で適切な診断を心がけております。
患者様のこころの拠り所となるような治療を実施するべく、心の専門家である公認心理師・臨床心理士によるカウンセリングを実施しております。詳しくは、ご来院した際にお尋ねください。
サポート3. 休業・傷病手当や精神障害者保健福祉手帳などの申請もサポート
パニック障害の症状を伴う精神疾患で休職する場合には、生活費について悩む方がたくさんいます。そのような状況で有効な行政の制度として、休業手当や傷病手当、精神障害者福祉手帳を発行することで受けられる支援などが考えられます。休業手当とは、会社の都合で労働者が休業する場合(使用者の責に帰すべき事由)に平均賃金の60%以上が支給される制度のこと。一方、傷病手当とは、業務外の病気やケガで療養中に労働ができず、給与が支給されない場合に休業4日目から標準報酬日額の3分の2が最大1年6ヶ月まで支払われる制度のことです。働けない状況でも生活費に困らないように利用可能な制度だと言えます。
さらに、パニック障害の症状を伴う精神疾患によって社会生活を健康に送れない状態となった場合は、精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)が発行できるケースがあります。精神障害者が自立した生活を送るための支援を受けやすくすることを目的として発行されるもので、公共料金などの「経済的支援」や生活保護や就労支援を受けられる「福祉サービス」、医療費の自己負担額を減らせる「医療費の助成」といった支援を受けられるメリットも。
このようなパニック障害の症状を伴う精神疾患に対する支援制度の申請をするには、病院の診断や通院が必須です。必要書類などはご自身でご用意いただき、精神科・心療内科で対応可能な診断書の発行などを早急にお手伝いします。申請について、詳しくは各自治体にお尋ねください。
パニック障害でよくある質問
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パニック障害の方へ避けるべき言葉はありますか?
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パニック障害の方に対しては、症状を非難する言葉や、症状が自己管理に依るものであるかのような言葉を避けるべきです。たとえば、「この場で発作を起こされては困る」「パニック発作は甘えだ」「気の持ちようでなんとかなるよ、落ち着いて」といった、患者がコントロールできない状況を理解しない言葉は避けましょう。
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パニック障害の方が発作を起こしたときには、どのように接すれば良いですか?
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パニック障害の方が発作を起こした際には、安心感を与えることが重要です。背中を優しくさすりながら、「大丈夫だよ」といった言葉をかけましょう。発作中は強い不安感に支配されるため、手を差し伸べ、安心できるようにすることが大切です。
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パニック発作はどのような状況で発生しますか?
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パニック発作は、炭酸やカフェイン、乳酸などが誘因とされています。また、睡眠不足、風邪、疲労の蓄積、ストレスなども要注意です。さらに、パニック障害の特徴として、リラックスしている時に突然発作が起こることがあります。症状は予期せず発生し、本人は突然の不安に強い恐怖を感じます。パニック発作の症状は数分でピークに達し、ほとんどは30分以内に収まりますが、繰り返し発症することで重症化する可能性があります。異変に気付いたら、すぐに専門医に相談しましょう。